2019年、金属原料界隈でなにが議論されていたのか

2019年の11月末、筆者は東京におりました。コンサルティング会社主催の無料セミナーに参加するため。絶望的な体調の中、東京駅界隈を徘徊していました。たしか、朧気ながら、フィリピンのスクラップ帝王と、中古車がどうのこうの、ニッケルのスラッジがどうのこうのと、オンラインで打ち合わせをしていたような記憶もあります。

懇親会で振舞われるタダメシほどうまいものはない

セミナー会場に足を踏み入れると、明らかに場違いな空気が流れています。なんとか商事とか、なんとか物産とか、なんとかトレーディングとか。どこぞの子会社とか。海外のコンサルティング会社の主催だったので、胡散臭いイギリス人とか、中国人とか、わけのわからない人種が、会場を仕切っています。ファブリーズと、蚊取り線香が入り混じったような、独特の香りがします。

もう、この時点で不調マックスで、本気で帰ろうかと思いましたが、このまま片道2時間かけて、なんの成果もないまま、陸の孤島(山梨)に帰るのも、気が引けます。

セミナーの内容は、すべて英語で行われたのですが、眼前に広がる意識の高い人種の皆様方は、したり顔というか。発表される内容に対して、常に「ああ、そうそう。やっぱりね」みたいな強気なスタンスを一切崩しません。メモのひとつも取ろうとしません。その割に、やけに「プレゼン資料は、あとでダウンロードできるか」とか、そういう細かい部分に対しては、非常に慎重になります。

まあ、ご想像の通り、プレゼン終了後の質問タイムに、誰一人と手を挙げないのです。この醜態を目の前にし、「“彼ら”は、ケータリングのサンドイッチを食べに来たんだな」ということが、よくわかりました。(ここで、ようやっと枕が終わります。)

預言者って、いくらで雇えるのかな

閑話休題。当時のメモを引っ張り出して、「なにが話されていたのか」ということに言及します。(メイントピックは、アルミニウム原料のトレーディング。今回は、銅の話を抽出。情報は、2019年の11月時点。)

  • '27には、中国が電気銅の輸入を必要としなくなる可能性があると言及あり
  • 信憑性は定かではないが、指針としては「自国の電気銅需要は、自国で賄う」ことで大方合意されていると思われる
  • 米国における新規精錬所の建造プロジェクトが現実味を帯びており、各経済圏のなかでスクラップの循環がなされる可能性も示唆
  • 需要家サイドは、TC/RC安の環境下において、収益拡大を推進しているとのこと
  • 銅スクラップの輸入に関しては、銅分96%以上のものを〝原料〟として認めていき、冷材用途としての高品位スクラップの流通は、今後も細々と継続してゆくはずではないかと言及
  • '20後半までは、大きな動きがないことは、市場関係者の共通認識として機能しており、目新しい提言はなかった

この時点で、「世界が風邪をひく」だの、「スーパーサイクルがどうのこうの」といった話がありましたので、主催者は、預言者でも雇っていたのでしょうね。

銅相場が荒れ狂う姿をみながら、気を揉む時期の到来

今年に入ってからの銅相場の推移を、ひとつにまとめてみました。視野狭窄に陥ってしまうと、「現在の相場は、今年の1月のそれと同水準まで落とした」という認識を持つことができます。

一方で、20年程度の広い視野で俯瞰すると、現在の“それ”がだいぶ高い水準にあることがわかります。毎回、こういった「サルでもわかる能書き」を垂れてしまうことに、心底辟易としてしまいます。

「だからどうした」と問われると、ぐうの音も出ませんが、「なるようにしか、ならん」ということですよね。少なくとも、3年以上前に、現在の市況を予見していた方々がいるのですから、短い時間軸の中での一喜一憂あれど、長い時間軸の中では、“オカミの意向”を具に研究してゆくしかないのだと思います。

個人的には、「動脈がどうの、静脈がこうの」などと言っていられないような、劇的な革新が起こるような気がしてなりません。本来、相場の下げ云々よりも、こういった「産業構造の変化が向かう先」について憂慮すべきではないか、そのように考える次第です。

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