サーキュラー・エコノミーは、「一見すると単なる環境政策に見えるが、これは経済戦略」である

先日、書店でこんな雑誌を買いました。(画像をクリックすると、Amazonのページに飛びます。)

東京財団政策研究所研究員の平沼光さんが、『資源エネルギー覇権競争の大転換が始まった~EU、中国に伍し、日本が「資源大国」になる好機~』と題し、グリーン・ディール政策について言及されています。

グリーン・ディール政策に関する“ファクト”

筆者の思いはさておき、これまで検討されている政策や、展望について、本寄稿より引用させていただきます。

  • 国際再生可能エネルギー機関 (IRENA=International Renewable Energy Agency)曰く、「2050年までにCO2排出量70%削減、温度上昇を2℃より十分下方に抑えるために必要なエネルギー転換にかかるコストは19兆ドルだが、得られる利益は50兆~142兆ドル」である
  • サーキュラー・エコノミー(Circular Economy)は、「一見すると単なる環境政策に見えるが、これは経済戦略」である
  • 「日本のリサイクル法における再資源化とは、循環利用ができる『状態にすること』という形式的な準備行為にとどまり、とても欧州に対抗できるものではない」のである

グリーン・ディール政策に関する筆者個人の“思い”

CEに関して、結論から言ってしまえば、「(日本という国にとって)千載一遇のチャンスであることは、間違いない」と思います。と同時に、前回のポストでも登場した「“無理難題”でもある」ように感じています。要は、筆者は“悲観論者”です。

“チャンス”の側面から言及することは、誰にだってできます。日本には、金属を中心とした資源再生技術があります。世界中で鉱山開発をしています。巨大な資本があります。莫大な量のいわゆる“都市鉱山”が眠っています。確かに、それは事実なんですが、「じゃあ、それらの知財、人材、資源、カネをどうやって、効率的に利用するのか」という具体的な施策は、残念ながら我が国にありません。

つまり、“無理”の側面をよくよく探ってみれば、「希少な〇〇を廃棄物から回収・精製できました!(めっちゃコストかかるけど)」だとか、「廃棄家電由来のE-wasteから貴金属を効率的に回収する研究を!(もう、何年もやってるけど、家電リサイクル法絡みのリサイクラー利権に阻まれ、にっちもさっちもいかなくなっている。“旨い”トコロは、もう全部、先行者利益で持ってかれている)」みたいな感じだと思います。筆者の妄想でしかないのですが、おそらく「手詰まりな状態」にあるのではないでしょうか。

今のままではいけないと思います。だからこそ、日本は今のままではいけない

そして、炎上したその“経済戦略”に、油を注ぐ某環境大臣。コンビニのスプーン有料化もいいと思います。なんか、こう、「身近にあるようで、身近にない、得体のしれない“ふわっと”したモノ」を、独特な表現で取り扱われる大臣ですが、もう少し、資源政策の持つダイナミズムといいますか、重要性を理解していただきたい。本当に、ビニール袋、容器包装のプラスチックの使う量を減らすことで、地球は喜んでくれるのだろうか。

テスラの排出権取引(環境規制を守れない競合から得られるクレジットセールス)に関しても、同様のことが言えますが、結局のところ、巷で騒がれている“グリーン(そういえば、最近、“エコ”というコトバをあまり聞かなくなった)”だったり、「環境に良い」という美辞麗句の裏には、なんか“胡散臭さ”が漂う。

大義名分として、「地球のために…」と捲し立てるが、結局は、「利権のために…」なっていないだろうか。カッコイイEV車の電池を充電するための電力は、どうやって確保していけばいいのだろうか。“グリーン”なことをやるためのコストが赤字だと知っておきながらも、「みんながすごい」と持て囃すもんだから、つい、容認しちゃってないだろうか。ここに、持続的な発展が見込めるのだろうか。

欧州の先進リサイクラーが放つ品質の経済性

5年ほど前でしょうか。以前勤めていた商社で、欧州へ営業活動をしていました。まず驚いたのは、彼の地の金属スクラップ業界は、大手ディーラーの寡占市場であることです。それぞれの会社に強い個性も感じました。次に、各社の“トレーダー”は、スクラップに触れる時間よりも、相場のリアルタイム・チャートと触れ合う時間が多いということ。完全に分業化しており、彼らは、「売買とリスクヘッジ」、現場作業、企業経営は、まったくの別物であると考えているようでした。

最後に、最も特筆すべきことを挙げます。それは、一部のリサイクラーに限った話ですが、いわゆる“ミックス・メタル”が、「ミックスなんだけど、ミックスじゃない」ということです。ミックスなのに、一丁前の値段で取引されているのです。なぜかというと、「中身(各金属毎の成分比率)が一定だから」です。つまり、「雑多なものを破壊して、選別して、成分を調整した上で、もう一回、ミックスな製品をつくる」のです。

なんで、そんなことをするのか、なんで、単一の金属に仕上げないのか。答えは、おそらく、金属スクラップの付加価値を上げるための王道、すなわち“格上げ”にあると考えています。しかしながら、この場合において、どうにかこうにか、手間暇かけて「普通のモノを“格上”のグレードにする」という思想は当てはまりません。筆者の妄想では、「売りにくいモノを売れるようにする」という思想が当てはまるのです。

“売ること”って意外と難しいの

つまり、百人の群衆の中に潜在的な窃盗犯が一人いれば、大問題になりますが、一万人の群衆の中にいれば、「一人ぐらい」と黙殺されるかもしれないということです。悪さを働かない限り、“ワルモノ”は、「ある程度の質と量を安定的に獲得するための“必要悪”」なのです。スクラップに100%は、ありません。「少しぐらい悪いところがあって当然だ」という認識からスタートし、「少し悪いところがあっても、溶かしてしまえば、誤差の範囲に収まるから問題ない」と捉えるのです。これは、効率の追求と、経済合理性を客観的に判断できる環境下でないと実現できない思想かもしれません。(かつての日本における“モノづくり”の基本は、そこにあったと伝え聞いています。)

そういった背景があるからこそ、「雑多に見えるけど、実はスゴイ原料」に対しての評価があり、市場が成熟しているのだと思います。そして、“それ”を買うユーザーが、そのままないし、ある程度の前処理で“原料”として炉に投入できるからこそ、通常では考えられないような“ミックス・メタル”の値段が存在するのでしょう。もはや、合金を製造する上での添加剤ですね。

プライスリーダーが決めること

幸か不幸か、「欧州が、グリーン・ディール政策の舵取りを担う」ことは間違いないようです。CEに関しても、欧州の理想、思想を踏襲するものと考えられます。つまり、グリーンな世界における“善し悪し”を決めるのは、欧州(と、蜜月関係にある中国)なのです。欧州の規範に沿った再生原料は良くて、それ以外はダメなんです。少なくとも、大陸向けの製品の原料としては使えない。

冒頭の平沼氏が指摘している、「日本のリサイクル法における再資源化とは、循環利用ができる『状態にすること』という形式的な準備行為にとどまり、とても欧州に対抗できるものではない」という理由は、まさにここに横たわっているのです。もし、日本のミックス・メタルを取り巻く環境が、「破砕して、アルミだけにしたから買ってくれ」なのであれば、欧州は「うちの製品は、成分を調整するための添加剤です。御社のお望みの成分を、お望みの量でお届けします」なのです。

出発地点や、産業構造がまったく違うので、一概に「欧州は素晴らしい!」とは言えません。ただ、「欧州の思い描く理想が正義」なのであれば、それに対して、できる範囲で順応してゆくことが、商売人の努めではないでしょうか。利益を最大化するために。

お知らせ

ここからは、当方の宣伝となりますが、みちるリソース(今井満資源開発)は、資源開発ディベロッパーとして、身近な潜在資源を金属原料に仕上げることに邁進してゆきます。資源循環を実現する上での“答え”を導き出すことは容易ではないですが、時代に即した“最適解”を提案できるよう、尽力します。金属スクラップの加工・選別・製品化までのプラントの提案も可能です。ご意見、ご質問等は、HOMEページに設けました、お問い合わせフォームよりお願いいたします。

リンク:みちるリソース(今井満資源開発)お問い合わせフォーム

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