言ったことは、具現化せんといかん。今後の金属原料の未来について、熱く語ります。

最近、小学校低学年の娘に、ある本を読み聞かせています。それは、『はれときどきぶた』シリーズです。主人公、畠山則安くんが大事にしている日記が、母親に盗み見られる場面を起点として、この物語は始まります。彼は、「あしたのにっき」を創作し、"あり得ないこと"が次々と現実のものとなるといった筋書きです。

この"あり得なさ"が、小学生の心をくすぐるようです。親心としては、「何事にも遊び心を持ってほしい」だとか、「口にしたことは、現実となることもある」ということを感じ取ってほしいなあと思うわけです。

毎度、枕が長くなってしまって、大変恐縮ではございますが、肝心なトコロは、「口にしたことを、現実(具現)にする」ということです。

また、お前は、相場が上がった銅に美辞麗句を添えて、「モーターが欲しい」だの「ミックスでも良いよ」と嘯き、相場が下がれば、「中国、もう買えナイね」などと開き直る、謎のスクラップ・ディーラーの悪口を言うつもりかと、お叱りを受けそうですが、そうではありません。

ここに、大変興味深い発表がございます。

参照:"Scholz to enter New Market in China" - Scholz Recycling Official Website

The German-based Scholz Recycling Group is heading to expand its recycling business in China with the world’s largest aluminum producer Weiqiao. On 9th June 2020 both companies have outlined a project to build a recycling industrial park in Shandong Province.
ドイツに本社を置くScholz Recycling Groupは、世界最大のアルミニウムメーカーであるWeiqiaoと共に、中国でのリサイクル事業の拡大を目指している。2020年6月9日、両社は山東省にリサイクル工業団地を建設するプロジェクトの概要を発表しました。

翻訳:DeepL

わざわざ輸入しなくても、国内でやれるから

要は、「ドイツの大手リサイクラーが、中国国内でELV事業並びに、再生部品事業に参画しますよ」ということです。ご存じの方もいらっしゃると思いますが、Scholzは、'16年にChiho Environmental Groupという香港資本に買収されています。(ちなみに、Chihoは、米国でも現地のリサイクラーも買収しています。)もしかしたら、既に欧州なり北米から、中国大陸でリサイクルのオペレーションを開始した企業もあるのかもしれません。新しい"動き"ではないのかもしれない。

しかしながら、個人的には、この"動き"にとても注目をしています。ちょうど'16年、筆者は欧州リサイクル事情を学ぶため、各地を行脚していました。その際、ドイツのリサイクラー勢力図の一端を、この目でみる機会を得たのです。個人的な思い入れがある。そして、現地でヒアリングを重ねているうちに、「近いうちに、業界に"地殻変動"が起きる」と感じ取ったわけです。だからこそ、今後、どのように運営されていくのかが、大変気になるのです。

これまで、散々言ってきたことですが、中国は本気なんですよね。虎視眈々と世界情勢を見下し、威風堂々と"次の一手"を打つ。準備は、相当前から始まっていたのです。もはや、バクテリアを飲み込んだアメーバが、吸収したバクテリアから特殊な能力を獲得する。それに似たダイナミズムが、当業界を揺るがしているわけです。

前回のポスト『中国向け金属“原料”貿易は、もはやものづくり』でも言及しましたが、人伝いで、得体の知れない"廃棄物"を集めて、トンチントンチン汗水垂らして"原料"を回収する時代に終止符を打ったわけです。中国自身が。それは、環境のためなのかもしれないし、税金をきちんと徴収するためなのかもしれない。もしくは、過剰なミドルマン(仲介者)利権の"リセット"なのかもしれないし、新たな"モノづくり大国"を目指す上で、この路線は不可避なのかもしれない。

いずれにしても、欧州のリサイクル"オートメーション"技術をもって、各種金属原料の"効率回収"を実現させることに、微塵たりとも揺るぎはないわけです。筆者の考えでは、おそらく、今は「国内の幹を育てるフェーズ」にあるんです。最終的には、中国共産党資本のリサイクリング・ラインが、世界各地で稼働しているはずでしょうから、いずれ「海外に鉢植えするフェーズ」が到来するんでしょう。(日本国内では、既にその"パイロット版"が稼働している?)

どうやったら儲かるか、全部知ってるよ

中国は、アルミや銅を筆頭とした有価物の回収(歩留まり)率の最大化、新たな有価物の創出、低品位貴金属"廃棄物"の回収を通して、「絶対に儲かるビジネス」を既に具現化しています。ただ、「同国のリサイクル業における"王道"は、絶対的に属人的である」ということは、否定できないと思います。そこで、属人性を排除して、スケーラビリティ(拡張可能性)を研ぎ澄ませる必要性が生まれたのです。

ある日、金属スクラップ再生業における、酸いも甘いも徹頭徹尾、知り尽くした集団が、「もう、人海戦術では、やっていけない(=長くは続かない)」ということに気づきました。そして、「そうだ。うちも、やり方を変えよう」と本腰を入れた瞬間が、まさに数年前の状況(=「中国、雑品やめるってよ」説が流布し始めた頃)であると考えています。

結局のところ、「四の五の言わずにやれる」のは、機械しかないわけです。機械は、嘘をつかない。技術を囲わない。だから、機械化を進めた。その結果として、欧州製の機械によく似た、中華式のナゲット加工機が、世界各地で導入されました。当業界の周縁部では、みんな、見よう見まねで、とにかく「電線の皮を剥いたモノ」をつくることに躍起になった。雑品は、よくわからないから、とにかく人件費の安い国で、中国式の解体手法で、中国基準の“原料”をつくることに心血を注いだ。

そして、中国は、この騒動(=「中国、雑品やめるからな!」)を通して、海外から“原料”を調達する術を確立したのです。モノづくりにおける王道でいうところの「調達リスクのヘッジ」であります。BCP的観点では、仕入れ先を複数に分散させること、相場のリスク、地政学上のリスクは、徹底的に矮小化させるべきと謳われています。また、仮に、今後、第三国でのモノづくりが進行すれば、いわゆる"現地調達"が可能となる。もはや、「共産党帝国の枠組みの中にいれば、世界のどこにいても、モノづくりができる」と言っても過言ではない。つまり、一帯一路構想のレールの上で、見事な大輪を咲かせるための準備の一環なのです。

コアと周縁部がみている思想は違う

例のごとく、ハナシが飛躍しすぎて、収拾がつかなくなってきました。(そろそろ、お決まりのだらだらエンディングで締めくくらせていただきます。)まあ、一連の動きを端的に表すと、この一言に集約できるかと思います。それは、なにかというと、「政治が、リサイクル業における利益の最大化を図っている」ということです。そして、実際には、構想を練るだけでなく、今まで野放しにしていた“利益の源泉”を政府が管理しようとしています。これまで、「断続的に複雑に“ゆるく”」繋がっていたリサイクルの輪を、半ば強制的に集約して、それぞれの“つまらない思惑”を排除しちゃうわけです。(いつもの通り、"都市伝説の香り"が漂ってまいりました。)恐ろしい世の中でしょうか。いえ、これも既定路線なのです。

以上、筆者の描く「あしたのにっき」でしたが、リアリティありましたでしょうか。(無責任)

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