中国主導のアフリカ銅山開発は、順調なようです
既に、なんべんも述べてきたことですが、「今の(スクラップが、“今までに比べて”売りづらい)状況は、異常」なんだと思います。そして、率直なところ、「どげんかせんといかん」と末端がわめいたところで、現状は何も変わらないわけです。お空の高い高い、酸素の薄い高貴なトコロでは、もう既に、あらゆる業界の“青写真”を描き切っているわけです。よほどの天変地異さえなければ、この“方針”は、不可侵であり、変更は不可能なわけです。当然のごとく、当スクラップ業界においても。
いやあ、お前さあ。俺も、都市伝説好きだから、多少の飛躍したハナシは許せるけれど、金持ちがスクラップ業界?まさか、気にも留めてないでしょう。
そのようにお叱りを受けることを百も承知で、パキッと正気で言わせてもらいますが、「今、オカミは、金属スクラップ並びに現物ベースメタルに相当入れ込んでいる」はずです。だって、儲かるじゃないですか。たとえ、利益率が数パーセントであろうとも、運用する金額が大きければ、利益も必然と大きくなる。そして、なんと言っても、色んな意味で底堅く“不明瞭”な取引が、公然と行える魅力は、とても大きいですよね。
じゃあ、その“不明瞭さ”って、なんなのかといえば、まあ、その辺りは、ここで触れるべきじゃないので、自粛しておきます。ひとつ言えるのは、金属くずは、物理的に動かせば動かすほど、原理上は“目減り”するということです。そして、各地域でそれぞれの独自規格(解釈)の違いがあるということです。巷のスクラップ問屋の重鎮に言わせると、「スクラップに基準はない」だそうですが、筆者はそのように考えておりません。
まあ、確かに、「所詮、スクラップはスクラップ」なのかもしれませんが、それじゃあ、「ただのクズ屋どまり」ですよね。それは、単に、自分のところの会社が、買主の求めている品質に対して、真摯に向き合えないことの証左であり、言い訳でしかありません。「積んでおけば、誰かが値をつけてくれる時代」は、しばらくお休みです。
中国のアフリカ大陸における“投資”
さて、ハナシは、アフリカの銅山プロジェクトに移ります。かつて、当ブログにて、コンゴ民主共和国(DRP)にて、Kamoa-Kakulaプロジェクトという“大きなヤマ”が動いているということについて言及しました。特筆すべき点は、主だった資本が、中国企業であるということです。また、ご存じの通り、DRPは、米国金融規制改革法(ドッド・フランク法)の影響下にある、紛争鉱物(Conflict Minerals)の“名産地”であります。
直近の当該銅山の状況はと言いますと、下記の通りでございます。
参照:Minigweekly.com "Ivanhoe to outline plans for ‘much larger’ scale Kamoa-Kakula"
カナダの鉱山開発会社であるIvanhoe Minesは来月、コンゴ民主共和国(DRC)のKamoa-Kakula銅プロジェクトを「はるかに大規模」に開発する可能性を強調した調査結果を発表する予定だ。(原文)
これは、「どこそこの国は良いけど、どこそこの国は悪い」といった二元論的なハナシではありません。人生ゲームでも、モノポリーでもいいですが、これは、資本家の陣取りゲームであり、早いモン勝ちの戦(いくさ)であります。
そして、かつてのポスト(『アフリカで花開く一帯一路』)をご覧になっていただければ、わかるかと思いますが、その当時(2019年10月22日)、このヤマを調べたときに目についたのは、オペレーションの採算ラインが、たしか3.1セント/ポンド前後だったと記憶しています。
最近、理由はよくわかりませんが、銅相場は、「まだ伸びる」みたいな言質が巷(英文メディアを筆頭に)では散見されますので、もしやのもしやですが、現在の相場水準が、今後もダラダラと続く可能性も大いにあるのかもしれません。ちなみに、当時のLME相場は、5,840ドル/トンだったそうです。今後、日本国内で銅スクラップ相場が再度崩れる時は、為替の異変かもしれませんね。実際に、足元では、ドルに対して中国元が高くなっており、大陸の鉱物・スクラップバイヤーにとっては、ドル決済の商品は、割安に映っているわけです。つまり、「やりやすい」わけです。たぶん。
いずれにせよ、もはや、このシャブシャブ相場では、需給だのなんだのといったハナシは、蚊帳の外。先に“ヨレた”人が負けなんですよ。はったりのはったりの上で、バッキバキの尖った神経で、いかに化かしあうか。もう、皆さん、薄々感づいているかと思いますが、「世界中のみんなが、疲弊している」わけでして、「みんな、揃いに揃って、超絶機嫌が悪い」わけです。こういった状況下では、何が起きるのかさえ、見当もつきません。まさに、「カミのみぞ知る」ということです。
Kamoa-Kakulaプロジェクトの展望
Miningweekly.comの記事は、このように続きます。
カクラの開発作業は現在進行中で、銅精鉱の生産開始は 2021 年の第 3 四半期を予定しています。カクラは世界最高水準の大規模銅鉱山になると予想されており、操業開始から 5 年間の平均フィードグレードは 6%以上と推定され、年間 380 万トンの初期採掘量が見込まれています。
アイバンホーのロバート・フリードランド共同議長は、「主要なグリーンメタルの不足が深刻化している」と述べ、そのためにはDRCが果たすべき重要な役割があると考えています。フリードランドは今週、中国非鉄金属鉱業(CNMC)との戦略的パートナーシップを発表し、「コンゴ民主共和国をはじめ、アフリカ全土には、大規模な新規高品位鉱物の発見に向けて、この地球上で最も優れた潜在力がある」と述べました。IvanhoeとCNMCは、コルウェジ近郊のルアラバ銅製錬所を所有し、最近デジワ銅・コバルト鉱山の操業を開始したばかりで、アフリカでの機会を共同で探索・開発していきます。(原文)
こういったハナシを見聞きすると、発想が稚拙かもしれませんが、このように思います。「ああ、中国は世界各国での都市鉱山開発から手を引いたんだな」と。世界の鉱物利権の構造が大きく変わっている(原油を筆頭に)中で、自らの手を汚してまで、他人の汚れ仕事を請け負うことの「割の悪さ」を実感したんでしょう。そして、ふと周りを見渡せば、そこにジャブジャブのカネと広い庭が目に入るわけです。つまり、大陸における真の意味での「踊り場からの脱却」は、「ゴミを輸入しない」とか、「原料が欲しい」とか、そういった類いのチマチマしたスケールの小さいステップではなく、もっと巨大な“なにか”の創造にあったのではないか、そのように考えるのです。
毎度のごとく、手前味噌で恐縮ですが、2017年12月17日、筆者は、『踊り場からの脱却』というポストをしています。
中国の“ヤバさ”というのは、一見荒々しい無謀な施策でありながらも、それが実際に将来のための荒療治であるということ。多少の痛みがあろうとも、今後必ず達成されるべき方向には、着実に進んでいる。
勿論、大義名分として、環境規制に引っかかるから品位の低いスクラップを輸入するのはやめましょうといったハナシになるのでしょうが、実際には既定路線(大綱)を真っ直ぐ突き進むと、産業構造の転換やら、生産技術の飛躍やら、製品品質の向上などの必達目標が掲げられていて、それらを達成していくために、もう少し品位の高いもの、良いものを手に入れて、どうにかこうにか使いこなす術を身につけていきましょうねといった、至極自然な流れの一環として、現在のような変革のタイミングがやってきたのだと思います。
この当時、筆者は、完全には理解できていなかったわけです。中国共産党が描く、壮大な鉱物施策の青写真を。答えは、明確になりましたが、要は「新たな利権の創造」が、彼らの目指す次の“らせん階段”であります。これに対して、米国は一生懸命、火消しというか、「邪魔する」ことに躍起になっているわけです。現在、ハイテク産業で起こっている帝国対帝国の争いは、すべてこの“流れ”に沿って行われているものと理解しています。
翻って、当業界における米国の“やっかみ”は、どのように進展するのでしょうか。手始めは、冒頭のハナシに繋がりますが、色んな難癖をつけて、“コンフリクト・ミネラル”を原料とした製品を徹底的に排除しますよね。人身売買や、労働環境、民族問題なんかをちらつかせながら。問題のある国々への金融制裁も強化するのでしょうか。商品の決済に難儀するようなことがあれば、貿易にも影響が出ますね。
そうなると、中国としては、「ここは、俺の庭だぞ」とやり返しますよね。米国が、カネのことでゴチャゴチャ言うんであれば、「じゃあ、ドル決済をやめて、デジタル人民元で済ませる」だとか、「もういいよ。お前んとこの国債売っちゃうよ」なんて暴挙にも出ることができます。もっと、現実的なハナシをすれば、「お前らが一生懸命つくった、あの、なんだっけ?Zorba?買ってあげないよ」と言い切ってしまえば、米国は路頭に迷うしかないわけです。長い目で俯瞰したときに、どちらが優勢なのかということは、明確であります。
以上、みちるリソースの「あしたの日記」でした。
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