どこの誰だったら、長く安心して商売ができるのか
前回のポスト『住友パワーとリージョナリズム』から、しばらくでございます。銅相場は、迷走に迷走を続け、よくわからない証券会社の思惑筋の方々が、とんちのような解説をしています。筆者としましては、そろそろ一休みが必要でないか、そのように思います。銅相場をみている、すべての方々が、「この相場は、実需とのリンクなし」と理解しているわけです。業界の重鎮が、何度も何度も「高すぎる」と言っても、相場は上がり続けた。未だに、しぶとく踏ん張っている。これは、由々しき事態であると考えています。
銅の相場ってなにさ
混迷を極めた政局も、今般の四連休に合わせて、慎重にコマを進めているようです。週明けの株価、先物にどのような動きになるのか。為替に関しても、若干円高に進行している気配がありますね。中国系のヤードの社長さんなんかは、「中国の相場が上がっているのに、日本のスクラップの値段は、なかなか上がらないね」と言います。国際的なコモディティ市場には、相場に寄与するファクターがいくつかあります。緻密な事業計画を策定するのであれば、このあたりの"値決めのされ方"に関する知識は、絶対的に必要となると思います。
例えば、なぜ、日本の電気銅建値と上海の"それ"がマッチしない(「上海相場の値段を円転したときに、なんでこんなに値段が違うのか?」ということ)のか。もっと言ってしまえば、"それ"の基準て、そもそもなに?ということだって、深く理解すべきです。ロンドンの相場をみている人がいる一方で、上海、ニューヨークのそれを指標にしている人もいます。そして、それらすべてを比較している人もいます。理解している人にとって、「"そこ"になにがあるのか」という事実は、当然のことであり、「理解していない人が、なぜ、"それ"を理解できないのかということを理解できない」のです。
毎度のことですが、冗長的になってしまいます。しかしながら、今後、コモディティ市場、"コモディティたり得るスクラップ市場"は、ますます素人が介入できなくなることとなるでしょう。今までのように、「オレ、中国のメーカー知ってるから、大丈夫!(オッス、おら悟空!)」的な"ノリ"で商売をされてきた方々は、いつか大波にのまれ、いずれ淘汰されるでしょう。だって、流動性が鈍くなっている市況の真っ只中、プロでさえ手が出せない状況です。かつてのような、「今まで大丈夫だったんだから…」的な楽観論は通用しない世になりました。
税関の役割として
丹精込めて、きれいな赤ナゲットつくったところで、中国の通関が、「23トン中、1トン分を溶解し、サンプリングしました。その結果、御社の赤ナゲットから、大量の不純物が検出されました。つきましては、当該コンテナの輸入はできません。権利放棄しますか?日本へシップバックしますか?」などと判断すれば、元も子もないわけです。税関は、きれいなもの(品質上問題なく、単価の高いもの)を通して、関税を徴収することが仕事ですからね。
電線需要自体も、だいぶ冷え込んでいるみたいです。(参照:『20年上期の銅電線出荷、11年ぶり低水準。9%減の31万3000トン』)国内にせよ、海外にせよ、根本的に需要がなくては、供給のバランスはとれないワケです。高純度かつ付加価値の高い製品として、電線は認知されているわけですから、消費財なんかよりも、ずっと堅いフォーキャストのもとで生産活動が行われているものと理解しています。その電線メーカーが、この有様ですから、銅製品全般の未来は明るくないと断言してもよいのかもしれません。
この業界には、「米中の戦争が始まれば、銅相場も上がる」とお考えの方が大勢いらっしゃいます。筆者としましては、肉弾戦に持ち込まれれば、武器・兵器類製造のための金属需要も上がると思いますが、現実的なラインでみれば、相場に対しての重しになってしまうような気がしています。仮に、国際物流が寸断されてしまえば、現物の輸送に支障を来すわけでして。まあ、それ以前に、米中の有事のための戦略物資の備蓄量というのは、そういった事象を想定した上で決められているはずでので、少なくとも相場の急騰を招くようなことは、あり得ないのではないかと考えています。もしかしたら、現物相場に対するスクラップ相場のプレミアム幅が大きくなるかもしれませんが。
リージョナリズムは進む
もっと言ってしまえば、有事の際に、「どこの国が安定供給できるのか」ということも考えなくてはなりません。それぞれのアライアンス、植民地のなかで、海運力と国際的な信用力のある国が必要とされます。昨今、「中国とオーストラリアは、政治的な対立している」とされてきましたが、結局のところ、オーストラリア発中国行きの鉄鉱石貿易は増えているようです。また、フランスは、人民解放軍関連の企業に対する制裁措置に加担しない声明を出しました。要は、「綺麗事言ってる余裕はない」ほどに、これまでもこれからも、ズブズブな関係にあるわけです。なんだかんだ言って、"欧米"は一枚岩でない。地政学的な見地で市況を占うことは、とても重要ですね。
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