日本の金属スクラップ業界が疲弊すればするほど利するのは、海外の仕手筋です

陰鬱とした日々が続きます。ウィルス騒動も一時は鎮静化していましたが、また、都内での感染者が、数値上はハネているように報道されています。何遍も言いますが、結局は、お上のさじ加減です。実際の感染者が、増えていようが、減っていようが、お上にぶら下がるメディアが吐き出す情報しか、一般大衆の得られる客観的な情報は、ないわけです。

翻って、我々の金属スクラップ業界における、信頼のおけるメディアとはなんでしょうか。日本経済新聞でしょうか。産業新聞でしょうか。大手や業界新聞を読んでいると、「世間一般は、こういうことを考えているんだな」という、表層的な概要を理解することができるようになります。恐らく、どの資源系商社さん、スクラップ問屋さんでも、新人教育の際には、"ハナシのネタ"として主要業界紙を購読するように指導するかと思います。

なにを信じていますか

併せて、市中の相場観を養うために、影響力のある問屋さんの独自発信情報を定期的にチェックされている方も多いかと思います。大畑商事の価格表でしょうか。荒井明商店のブログでしょうか。東南アジアのスクラップ・ディーラーは、大畑さんのウェブサイトを、日本のいわゆる"通り相場"として捉えているようです。古くからインターネットの可能性を見抜き、パイオニアとして情報を発信し、今もなお継続して、そのポジションを確固たるものとされている。この影響力は、経営上の重大資産ですよね。

筆者個人の見解としては、いわゆる「業界の動向を追うため」、いわゆる「相場の動きを追うため」に、お金を払うことの意義が薄れてきているように感じています。「いくらで売れるのか」ということを知りたければ、問屋さんの独自発信情報をみれば済みます。かつては、LMEの前日終値を知る術が、新聞媒体や一部の大手商社の営業マンが持ち込む情報にしかなかったのかもしれません。ただ、現在に至っては、逐一、いわゆるアプリで相場をみることができます。要は、相場情報というものが、大衆化したということであり、陳腐化したということです。

ある程度タイムリーに、均質的な情報が流布することで、なにが起きたかと言えば、「過当競争」と「参入障壁の崩壊」です。極論を申し上げてしまえば、金属スクラップを触ったことがある人間であれば、誰もが知っている"ボリュームゾーン"にある商品(ピカ線、電線、サッシ等)は、「誰がやっても同じ」になったわけです。専門性云々以前に、「欲しいなら、良い値段出せよ」と売手優位の市場が形成されたわけです。最終的には、その他の"手の出しやすい"商材にも、その競争原理が働き、金属スクラップ全体の相場が押し上げられるかたちとなりました。

森を見て木を見ず

当業界における末端市場では、「地球のためにリサイクルしましよう」と標榜し、「期待値の低い金属屑を安値で仕入れる」ことが正義であったと思います。かつての需要家は、中小スクラップ問屋で大まかな選別がなされ、大問屋や専門問屋を経て品質の担保ができるものを、商社なり直納問屋から仕入れることを"筋"であると捉え、頑なにその商流に固執していました。しかしながら、いつの間にか、その"サプライチェーン"に綻びが出始め、最終的には、需要家が末端に営業をかけ、長らく保持していた原料調達の"エコシステム"を自ら壊し始めたのです。

はっきり申し上げますが、現在の業界を取り巻く惨状は、件のウィルスの"せい"でしょうか。確かに、大きな"影響"を与えましたが、本質的な要因は、どこか他のところにあるように思えて仕方がありません。確かに、業界の新陳代謝が必要なのかもしれませんし、ダメなところは、自然と淘汰されるべきなのでしょう。ただ、日本の金属スクラップ業界が疲弊すればするほど利するのは、海外の仕手筋です。"エコシステム"が適切に機能せず、彼らの介在余地がいかようにも存在する限り、日本の資源が安く買い叩かれるでしょう。そして、さらなる不必要な淘汰が起き、業界全体が路頭に迷うことになる。

よくある話

昨今、永続性のあるリサイクルを達成し、ビジネスとして捉えるべきであるといった論調が強まっていますが、言うのは簡単ですよね。なぜ、それがこれまでできなかったのか、どこに流出していたのか、どのようにすれば国内の資源が国内にとどまり、適切に効率よく再生できるのか。そういったことを、真面目に論議する必要があると考えています。

自分の畑を必死に守ることも大切だと思います。ただ、その命を育むためには、水路をひかなければならないし、有事の際に決壊しないように、治水にも思案を働かせなければならないかもしれません。「なにかおかしいな」と気付いたときには、既に「水源が枯れていた」なんてことは、よくある話です。


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