非鉄金属スクラップの世界に、専門商社はもういらない
非鉄スクラップ・ブローカー、ディーラーの皆様方、いかがお過ごしでしょうか。かつて、「地球はひとつ」のスローガンを高々と掲げ、(一般には)得体の知れない、謎のコンテナ群が、世界中の港を行き交っていました。規模が大きくなるにつれ、コンテナでは対応できなくなり、バルク船まるまるひとつを単位として、「得体の知れない、謎の品々」が、食欲旺盛なグリーディ国家に運ばれるようになりました。もはや、今となっては、「盛者必衰の理(ことわり)」とでも申しましょうか、「風前の灯(ともしび)」と申しましょうか。
"グローバリスト"の絶滅
今般のウィルス騒動で明確になったというか、改めて強く再認識させられたのは、「地球はひとつではない」ということでしょうか。かつて、当ブログにて『踊り場からの脱却』という記事を、2017年の12月にポストしました。その当時、まだ雑品の中国向け輸出は機能していたと思われます。ただ、過渡期にあり、様々な情報が錯綜していたことは、間違いないようです。(人間というのは、ほんの数年前の出来事でさえ、鮮明に記憶できないのですから、本当に困ったものです。)
日本の“ヤバさ”というのは、相撲協会の内輪揉めのハナシにせよ、大物政治家の特定利権との癒着にせよ、本当にどうでもよいことを、どうでもよくないことに昇華させて、どうでもでもよいことに自分たちの神経をすり減らすこと、すり減らされることに快感を見出してしまう、マゾヒスティックなところにあると思います。不毛な議論の末に、無能な人間がヤンヤヤンヤ囃し立てるうちにほとぼりが冷め、「なかったこと」になってしまいます。進歩はないと考えています。
どうやら、その当時、日本の世論は、「相撲協会の内輪揉め」と「政治家の利権」について、真面目に向き合っていたようです。"相撲の件"については、未だに「なにが、どのように決定し、結論がなんであったのか」ということは、理解できていません。"政治家の件"については、今現在もそうですが、「なんのための政治なのか」ということは、未だに理解できていません。今、我々が置かれた状況というのは、磔(はりつけ)に目隠しの状態で、ただひたすら、メディアから注がれる「コロナについての最新情報」を口に注がれている苦行者のようです。
今の中国は、燦々と照りつける国家運営の大綱のもと、粛々と次のステージへ駆け上がるための準備をしているわけです。
おそらくですが、この今、一瞬でさえ、中国という国は、"粛々と"己の歩みを前に前に進めています。良し悪しは別として、そういう国なんだと思います。「国体を維持するため」には、どんな手段でも講じる。それは、彼の国に限ったことではなく、日本だって同じです。かつて、某オリンピック実行委員長は、「日本の国体を維持するため」には、どんな手段でも講じると言明しました。その背景には、「日本は神の国であり、天皇を中心としたクニである」ということと、「その庇護を最も受けている"我々(神道政治連盟)"が、国体を維持する任務についている」ということも、しっかりと政治の潮流の間で、声高に宣言されました。
誰がウィルスに負け、誰がウィルスに勝つのか
今般の「オリンピックやるの?やらないの?えー、延期なの論争」で暗躍されたのは、もちろん左記の大先生でありますし、氏の強欲が、ウィルス対策の施策に悪影響を与えたことは、間違い無いと筆者は考えております。政治的に不謹慎なことは、あまり申し上げたくありませんが、「老害は早く排除すべし」だとも考えております。また、今後、感染者数が大幅に上振れした場合、「オリンピックを開催する意義」自体にクエスチョン・マークが突きつけられることになるのでしょうが、果たして、その時に"御大"は、どのような采配をとるのでしょうか。あまり考えたくはありませんが、為政者のなかに「ウィルスに感染し、ウィルスと戦い、ウィルスに打ち勝った」人物が出て、メディアで"復活"を大々的に報じるような出来事になった場合、おそらく"御大"は、「神の国云々」というハナシを喧伝し、"国体"の再構築に邁進するのでしょうね。
実際に、今まさにこのタイミングで、某国首相は「私を治療してくれた医療従事者リスト」を公表しています。完全に「国威を発揚するため」のプロパンガンダですよね。これと同様の手段は、先進国だろうが、民主国家だろうが、どの国の為政者も使いますよ。もはや、「グローバリズムの終焉」とかなんとか言っているうちに、もっと奥深い、「かつての我々が心の拠り所としていた、当たり前の"考え方"とか、"やり方"のような、大事なトコロが一瞬で過去のものとして、吹き消されてしまった。」そのように表しても、間違っていないのでは無いでしょうか。
翻って、非鉄金属スクラップ業界はどうなる
筆者の表面的な理解ですが、ものすごくマクロ視点で、かつての当業界の"勢力図"を俯瞰した場合、強豪勢の特徴として、おそらく顕著に表れてくるのは、「1.共産党の内部にどっぷり浸れているか否か」だと思います。その次に、「2.規模の大きい需要家に安定供給ができるか否か」と「3.堅実なファイナンサーを抱えているか否か」という点が挙げられると思います。
少し脱線しますが、大変興味深いことがひとつあります。実は、米国のリサイクル協会であるISRIには、貿易部会という名の"非常に閉鎖的な"会合の場があるわけです。その会員のなかには、中国やインドなどに事務所を置く、大手のスクラップ業を営む会社の役員、経営者が多く含まれているわけです。日本の某上場会社も参加しているはずです。いわゆる、権力者たちの集いです。もっと簡単に言ってしまえば、「中国にスクラップを流通させるための結社」です。そして、とても不思議なことなんですが、その"御大"が、いわゆるISRI規格を策定する部会の重役でもあるんですよね。要は、「一握りのスクラップ貿易業者が、中国共産党の意向を汲みながら、彼らの都合に合わせたルールをつくり、経済活動を行なっている」わけです。ここまでは、筆者が見聞きし、裏を取った事実です。
また、信憑性は定かではありませんが、実はそれだけじゃなくて、「"見返り"としての特別枠が存在する」という噂も聞いたことがあります。要は、みんなが「枠がなくて困っている」ときにも、「あーほんとは、これも輸出できたらいいのに」と地団駄を踏んでいる時でさえ、特権階級の彼らの会社を経由すると、不思議なことに、"枠"がポッと湧き、大陸での通関がスルっと通ってしまうということらしいのです。(あくまでも、噂なので真偽は定かではありませんが、筆者が昨年、米国の大手リサイクラーを訪問した時、彼らがやっていたのは、「CCIC検査数 < コンテナ出荷稼働日数」でした。しかも、コンテナ出荷本数/日は、少なく見積もっても、20本以上。驚きが、その効率の高さにあるのではなくて、「え?!CCICの検査って、そんなにユルかったかな?」という点です。)
閑話休題。左記、「これまでの定説」について言及しましたが、今後の方針については、下記のように考えています。
おい、オメエ誰だよ
お前みたいな"Middleman"は、もういらネェからな
その理由は、以前、『世界のあちこちで、ポジショントーク砲が炸裂しています(2020/01/23)』で言及した通り、中国は「ISRI美国基準」を蔑ろにする方針で動いているからです。中国独自の"通関基準"を設け、それに合格すれば、それを"原料"とみなし、国内への流通を担保する制度へ舵を切ったわけです。実際に、その前哨戦として、6類クオータを付与する対象の前提として、「実際のものづくりができる企業」に限定した動きを見ても、今後の方針がいかに盤石なものであるかということを裏打ちしています。(="Middleman"の排除。)
['20年1月時点で流布していた、6類輸入に係る新規制]が適用されるとしたら、「本当に困ってしまう」のは、米国のサプライヤー陣だと考えています。なぜなら、彼らが一生懸命作り上げた「ISRI独自の品質基準、商品性を担保していた解釈を、中国の"それ"が蔑ろにしている」からです。
日本でも、かつて「商社不要論」が持て囃された時期があると思います。要は、「ただ、そこにいるだけで金儲けできると思うなよ」という視点です。色々な要因があると思いますが、その当時、専門商社が築いた"仲介業"という商売手法そのものが大きく揺れたものと理解しています。言い換えれば、いわゆる"総合商社"の面々は、横の繋がりを武器に、専門商社が持ち合わせていない"シナジー効果"を生み出すことで、立ち位置を確立し、"存在意義"をそこに打ち出しました。
切実に、今後なにをしていけばいいのか
この先、経営環境がどのように変化していくのかということは、容易に想像できませんが、「未来の商社(=仲買人)」が立ち入る隙間としては、やはり"常時対応型のコンサル"的な立ち位置に収束するのではないでしょうか。実際に、米国でもいいですし、中東でもいいんですが、大手のディーラーさんは、必ずと言っていいほど、顧客対応が迅速です。先物取引がある都合上ですが、世界各国、どの時間帯にも対応できるカスタマーセンターを持ち合わせています。
また、今後は、いわゆるAIの進化も進むでしょうから、商社・仲買人の実体が、クライアントに常駐する必要もないし、24時間、不眠不休で顧客対応に追われる必要もなくなるものと考えられます。つまり、今後日本でも、右から左だけの「専門商社の淘汰」が進むものと考えられます。一方で、「総合商社プラスなにか」を持ち合わせている集合体(企業ないし、総合的な専門家集団)は、今後、一層持て囃される可能性はあります。
現在、総合商社の持ち合わせている機能を列挙してみたいと思います。
- 金融 ファイナンス
- 物流 ロジスティック
- 市場開拓 マーケティング
- 商品開発 ディベロップメント
- 与信管理 リスクマネジメント
- 市況分析 リスクヘッジ
色んな表現あるかと思いますが、筆者の思いつく限りでは、上記の通りです。
上記の特徴を、文章にまとめると、きっとこんな感じになると思います。
- シノゴの言わず、出したいときに出せて、迅速で間違いのない支払い。次に、なにをやったらいいかヒントをくれて、周りがなにをやっているのかっていう情報も教えてくれる。
要は、「本業(スクラップの集荷から選別・加工、荷造りなど)に集中させてくれるトコロと商売したいな」という需要があるわけです。そこに、何を加えたら、「顧客を離さない魅力」たり得ますでしょうか。
筆者がひとつ挙げるとすれば、"QC機能"ではないでしょうか。こう言うと、「スクラップに品質管理かよ。もはや、ものづくりだな」と思われるかもしれませんが、その通りだと思います。バイヤーサイドとしては、「我々の欲しいアレ」をわかってくれるトコロがあれば安心できるし、セラーサイドとしては、「ウチの品質は、実はアレなんだよな」といった不安を払拭することができれば、彼らも安心できます。今後、スクラップ貿易の現場でも同様に、「出荷前の品質を確かめたいんだけど、コロナのせいで、サプライヤーの国に入国できない」という事態に当然発展すると思います。そういったときに、なんらかのかたちで品質を担保する術が求められるはずです。
本当に、先の読めない時代に突入しました。少しでも早く、事態改善の策を見出して、この難局を乗り越えたいですね。