パラジウムと極東物流政策に関連はあるのか

ドーン!とくると思っていましたが、きませんでしたね。もう、なにが織り込み済みで、なにが思惑筋なのか、さっぱりわかりません。金属相場のことです。どうでもいいですね。

もはや、ここまで混沌としてくると、相場と実体経済とのリンクが薄れてきます。人と人との関係性も薄れてきます。疑心暗鬼になります。駆け引きが雑になります。さらに、信用不安が信用不安を呼びます。富める人々は、信用スコアの低い人間から、バッサバッサと斬りつけていきます。金払いの悪い人、品質の悪いものを売りつける人、時間通りに来ない人。

中国では、今般のウィルス騒ぎのなか、スマートフォンに格納された行動履歴をもとに、「この人は、安全だろう」とか「この人に近づくと、なんか感染(うつ)るよ」みたいな評価がされるシステムが確立され、実際に運用されているとか。教育や労働に関しても、リモートでの対応を進めるべく、次々に新技術や事業が起こっているという。あえて、我が国での進捗状況等に触れるつもりはございません。商魂の違いは、まざまざと有事の際に表れる。そういうことではないでしょうか。

実際のところ、金とパラジウムって、どっちが価値あるのさ

昨今、筆者が注目しているのは、ロシア事情でございます。

ここ数ヶ月の間、パラジウムの動きは、"ものすごく"不自然でした。確かに、環境規制が厳格化されたこと、今後の内燃機関需要減に伴う、瞬発的な触媒需要の逼迫等、「まあ、言われてみれば」的な納得感はあるんですが、「いや、それさ、そういうけど、それは行き過ぎじゃね?」的なインスティンクトも働くわけです。もっと言ってしまえば、「あの、銅の落ち着きぶり」ってなんなんでしょうか。今般のウィルス騒ぎで、コテンパンに打ちのめされたかのように振る舞いながらも、毅然とファイティング・ポーズをキメて、戦い続けるその雄姿。表現が稚拙で恐縮ですが、なんかアイツ、イかれてるよな。

シベリア経由で持っていけばいいんだよ

ここからは、スクラップ業界に多少なりとも影響のある、地政学上のトレンドに関して言及したいと思います。昨今の"温暖化"(地球の長い生涯のなかでは、大したことはないんでしょうが)が進む中、「北極の氷ガー」ということで、北極海航路が注目を浴びています。というか、こういう流れで進めたくて、ワカチコしていた国はひとつではないと思います。そして、例のごとく、アメリカ・コーポレーション傘下企業が、「お願いだから、北極海を荒らさないで!」と涙ながらに語っています。

なんで、この話がスクラップに結びつくかというと、「欧州から極東までの船足が短くなる(早く着く)」し、「治安の安定しない地域を通る必要がない(余計な"袖の下コスト"が減る)」ということになりまして、我々の所属する静脈産業におきましても、流動性が増すわけです。例えば、通関処理も含め、ドアツードアで40日以上かかっていた物流が、20日前後に短縮されたらどうでしょう。一般消費者の感覚に置き換えてもいいかもしれません。アマゾンのデリバリーが、今まで4日だったのに2日に短縮されたら、ずいぶんと違いますよね。

実際に、趣向は違いますが、EU加盟の某国は既にやっています。なにをやっているのかというと、「電気銅を列車で中国まで運ぶ」という荒業です。実際にやっている人から聞いた話なので、間違いはないと思います。その人によると、いわゆるシベリア鉄道の"特別車両"で、一気にドカンと運んでしまうそうです。軽くさらっと言ってしまいますが、「その中に、貴金属インゴット満載の車両がひとつぐらい紛れてても、わかんないすよね」ということです。足元は、おそらく銅鉱石なり、銅精鉱の車列に混じって、輸出しているのでしょう。また、帰りの便には、重工業向けの機械類を積んだコンテナが満載で…あとは、ご想像の通りです。

マレーシアに依存するのって怖くないの

要は、北極海航路が使えない状況下においても、欧州から極東への(逆も然り)ロジスティックは、我々が思う以上に盤石で、新たな動きが活発化しているということだと思います。また、いつものように飛躍したハナシを突然ぶつけますが、今後、スクラップの仕向地は、インドネシアでもなく、香港でもなく、パキスタンでもなく、我々が聞いたこともないような欧州の辺鄙な街に置き換わる可能性も示しています

そんなことを言っても、「中国人の熟練工ガー」という、昔ながらの発想もあるかと思いますが、どこの国、地域に行っても器用な人は、必ずいます。それに、人件費の安い国々では、もしかしたら、既に中国のそれに匹敵するほどの解体能力を持ち合わせているかもしれない。ま、妄想でしかありませんが。究極のハナシをしてしまえば、仮にでも、公然と"オフブラック"なことをやってくれるところがあれば、中国の解体工の技術がどうのこうのと能書き垂れる必要はないわけです。(あー言っちゃった。)

もっと突っ込んだハナシをしてしまえば、「うちではダメだけど、あそこでは全然OK(ブラックではない)」なこともあるわけです。例えば、「うちは、こんな樹脂の多いスクラップはやらないよ!」と言い張るところがあっても、一方で「あー、樹脂?これぐらいだったら、うちで手をかけて使いますよ。銀もとれるし」といったように、受け取られ方が違うことも多々あるわけです。人ぞれぞれ性癖が違うように、需要家だって、それぞれに得意なものがあってもおかしくないですよね。

ま、これぐらいでいいっしょ

ここまで言っても、「お前は仕入れのことを考えていない。通り相場ってものがあるだろうが。それに、地球の反対側に送るのと、隣の国に送るのじゃあ、コストが全然違う」と納得できない方がいらっしゃることは、百も承知です。でも、その考え方って、「集めればジャンジャン売れる時期に、特定の地域向けにドンドコ送る」という前提ですよね。また、そもそもの"通り相場"ってなんなんでしょうか。それは単に、得体の知れない"需要"に対して、「なんとなくこれぐらいでいいだろう」と誰かが決めた"イメージ"でしかないと思います。もし、それが本当に実体のない"イメージ"に過ぎないのであれば、いとも簡単にその"威力"は無かったことにされてしまいます。

これから、7月の新規制適用に向け、大陸向けの"相場感"がみえてくると思います。今のところは、明瞭なビジョンはみえてきていません。ただ、ひとつ明確なのは、「基準がどうのこうの、あれダメ、これダメ。これはイイけど安いよ」と続けていると、売る側はイヤになっちゃうわけです。だって、「今まで、喜んで"なんでも"買ってくれた」わけですから。だったら、売り手としては「仕入れ値を下げて、手をかけてでもキレイなものを作り込んで、妥当な値段で買ってくれるところに売る」という流れに持っていくしかなくなるわけです。もはや、"巨大胃袋"と揶揄された中国が、スクラップの仕入れに対して、そのようなスタンスであるわけですから、至極当然の流れなわけです。

果たして、今は買い手市場なのか

そうなんですよね。結局のところは、販管費がどれだけかかろうと、仕入れが安くなれば、その分の利幅は確保できてしまう。仮に、利幅が十二分にとれるのであれば、流通量を減らしても、これまで同様やっていける可能性だってある。すごく興味深いことなんですが、筆者は、スクラップに関して、メーカー主導の完全なる"買い手市場"になると予想していたわけなんです。しかしながら、実のところは、確かにそのようでありながら、違うんですよね。

左記で言及したように、「以前より安く仕入れられる」という状況と、リサイクルできないものが国内(業者)に滞留するという事実を差し置いても、「スクラップを解体することで生まれる旨味(=付加価値)が国内(業者)に残る」という事実があれば、考えようによっては"売り手市場"になり得る。今まで、大陸に全部渡していた"旨味"を取り戻すチャンスと言っても過言ではないかも知れない。また、商流の真ん中でなんとなくぶら下がっていた業者が淘汰されていくことで、その上流と下流が適正にマージンを取ることができるようになるかもしれない。これまでの"ディストピア論者"が、"ユートピア論者"に鞍替えですかと笑われるかもしれませんが、昨今の動きは、業界全体を抜本的に変える一大事であります。

閑話休題。今しがた、「コンテナの列車輸送という"荒業"」について言及しましたが、ここに大変興味深い記事があります。

コロナウィルス:工場の稼働が落ち込む中、2月度における貨物列車利用が驚きの伸長 政府発表(Coronavirus: China reports surprising rail freight growth in February despite factory activity tumbling)

  • 幹線道路の封鎖にも拘らず、列車による輸送は通常通り行われている
  • 列車輸送全体 前年比、+4.5%の伸び
  • 全体2月出荷: 171,000貨車/日
  • うちコンテナ輸送: 約2千7百万トン / 39.5%上昇

時代が変われば、やり方も変わるということですね。


にほんブログ村 環境ブログへ
にほんブログ村