混沌とした時代ですから、なにが売れるのかわかりません

昨日は、所用で近所の駅ビルに入りました。事務作業を喫茶店の一角でやっていると、暇そうに、わけもなく、集団で、ぷらぷらと彷徨っている、スーツ姿のおじさま方が目につきました。何組も、です。これは、「おそろしいことになったな」と思いました。

なにかを扇動するような意図はありませんが、「サラリーマンが、やることがないのに、徒党を組んでサボっている」のです。(昼間から公然とサボってもいいのは、筆者のような個人事業者だけだったはずです。)今のうちは、会社側も「まあ、しょうがない」と見放しているのだろうし、管理のしようもないので、致し方ないことは自明であります。しかしながら、「やべ、お役所に申請できる"休業補償"の枠が足りねえ!辻褄が合わねえ!」となったときに、果たして企業側が、現在のような野放図を容認できますでしょうか。(今後、おそらく「架空"休業補償"請求をした、某県の某社」みたいなニュースが出てくることでしょう。)


閑話休題。今回は、いつもとは趣向を変えてみようと思います。


マハティールさん、あの人に似てるよな

マレーシアのマハティール首相でありますが、この方、周知の通り、既に90歳を超えております。この歳で、この太々しい顔といいますか、「俺、まだまだ現役だからな」という、いわゆる"半端ない"オーラ、すごいですよね。

上記、ツイートに関しましては、政治の門外漢である筆者にとっては、知ったこっちゃないですが、「今後の東南アジア政経事情は、相当荒れるのではないか」ということを、恐らく示唆しているものと思われます。(隣国のタイ王国におかれましても、また一味違った分野で、きな臭い動きが散見されます。今後、ますます既得権益層における連立構造の瓦解、そこから生まれる民衆の分断、宗教対立の激化など、複雑な問題がさらなる複雑な要素を孕み、左記の通り、混迷を極めるものと考えています。)

マハティールさんの顔を見ていると、Netflixでクラシック作品として崇められる”Breaking Bad”に登場した、麻薬王ことグスタボ・フリングのことを思い出してしまいますね。普段は、フライドチキンのチェーン店を営む店主が、実は、麻薬王だった、という役柄なんです。ご存知の方も多いでしょう。

グスタボさんにみる風林火山

劇中のグスタボさんのすごいところは、「マハティールに似ている」という点でも、「莫大な財産を築いた」という点でもありません。個人的にインスパイアされたのは、「圧倒的に巨大かつ不可視な"帝国"をつくり、それを安定的に運営する術を知っている」という点です。グローバルだの、大国とビジネスをしてますだの、"B2B"だの、しのごの言わず、「リスクを矮小化すれば、必ず大きな利益を生む商売」に対して、冷徹かつ大胆に対峙する姿は、観る者のハートを鷲掴みにします。そして、商売人としての姿勢が潔い。決して、"情"で動かず、己の"感(カン)"で動く。

甲州商人であれば、孫子の書かれた「風林火山」に通じるものとも感じ取ってしまう。

故に其の疾きこと風の如く、其の徐(しず)かなること林の如く、侵掠(しんりゃく)すること火の如く、動かざること山の如く

知りがたきこと陰の如く、動くこと雷霆(らいてい)の如し、郷を掠めて衆を分かち、地を廓めて利を分かち、権を懸けて動く。

参考:『甲府市/「風林火山」には続きがある!?

実際に、前半部分では、戦(いくさ)におけるスタンス、後半部分では、「勝利をおさめたあとの真髄」が書かれているものと理解しています。

なにを、どうしたら儲かるようになるのか

またもや、脱線してしまいました。筆者が言いたかったことは、これです。「リスクを矮小化すれば、必ず大きな利益を生む商売」とは、我々の業界、つまりは非鉄金属スクラップ業界において、なにが当てはまるのかということです。

LVMHグループに代表される、いわゆる"ブランド・ビジネス"は、「人間の所有欲をほどほどに満たす」ことに儲けの源泉があると考えています。(全部満たしてしまえば、そこで消費は完結してしまうからです。「もっと良いもの、もっと凄いものがウチにはあるんだよ」ということを消費者に提案し続けねばならないということだと思います。)言い換えれば、「"イメージ"が毀損するようなリスクを徹底的に排除しなければならない」ということでしょう。

実際に、グループの頭がこう述べています。

長期的なビジョンに基づく私たちの企業モデルは、傘下メゾンの伝統を尊重するとともに、比類のないクリエイションとクオリティを追求します。こうした姿勢が、グループの成功を支える原動力であり、未来のさらなる成長を約束する土台でもあります

ビジネスはシステム

劇中のグスタボが、表の顔として経営していた飲食チェーンは、どうでしょうか。もしかしたら、彼が経営していた"麻薬チェーン"と比較した際に、共通項がいっぱい出てくるかもしれません。というのも、フランチャイズ経営の"旨味"って、実のところ、よくわかりませんが、「食べ物を売って出る利益」なんかよりも、「その食べ物を売るためのシステム」の方が、よっぽど大事だと捉えているんですが、間違っていないでしょうか。コンビニエンスストアに置き換えても、同じことが言えると思います。

これ以上、深掘りすると、またもやとんでもない方向に話が進みそうなので、遠慮しておきますが、要は「うちの業界も、もう少し"システマイズ"してみる価値があるんじゃないか」ということです。現状は、非鉄金属といえども、腐る程種類がありますし、業種もありますが、結局のところ、いわゆる"上物"に関しては、「他より高い値段出したモン勝ち」ですよね。商売なんで、当然のごとく、「一円でも高い方に売る」のが筋であることに間違いはありません。ただ、ひとつ言えるのは、そこに"特殊性"はないです。

言い換えれば、「アンタんとこと商売する理由は、高く買ってくれるから」ということになります。だから、この業界における参入障壁は低いままで、際限のない消耗戦を繰り広げる必要性に苛まれる環境に置かれてしまったのだと考えています。資本の流動制が著しく低下した今、「あんだけ値段を釣り上げておいて、なんだよ。ダメになったら買えません。そんなバカな話があるかよ」と嘯いても、誰も責任は取ってくれないのです。

良し悪しを決めるのは誰か

どうでしょうか。我々も、「比類のないクリエイションとクオリティを追求」してみませんか。需要家が、ヨダレを垂らして「売ってくれませんか」と言わしめるほどの"原料"をつくるのです。所詮、品質要求事項(期待値)なんて、「お客さんごとに違う」わけです。死ぬ気で、完璧なもの、ダストが何%で、どうのこうのをつくりましょう、という話ではありません。抽象画の巨匠は、抽象画が好きでたまらない人にとっての巨匠たり得ますが、普通の人からみたら、ただのお絵かきにしか見えないかもしれません。

混沌とした時代ですから、なにが売れるのかわかりません。誰もが、「いやあ、こんなスクラップのなかのスクラップだろ。もう、ゴミと一緒じゃん。こんなもん、手を出さない方がいいよ」なんて思い込んでいるものが、いつか日の目を見る時代が訪れるかもしれません。圧倒的な効率と、圧倒的な品質があれば、需要家が欲しがる商材に化けるかもしれない。そんな夢のある仕事をしていきたいと、真剣に思っています。