中国、スクラップやめるってよ
今後の世界経済の趨勢を占うべく、様々な"胡散臭い"統計が各所で発表されていますね。
米中貿易協議の先週の「部分合意」によって、世界的な先行き不透明感が緩和されるかどうか投資家は見守っている…報告書は「見通しではリスクが優勢に見える」が、多くの国で最近実施された金融緩和に伴い、「米中貿易摩擦が緩和されたり、英国の欧州連合(EU)からの『合意なき離脱』が回避されたりする場合は特にそうだが、需要が予想以上に押し上げられる可能性もある」と分析した参考:Bloomberg「IMF19年世界成長3%に下げ、10年ぶり低調-日本20年0.5%に上げ」
なにを言いたいのか、よくわかりませんが、要は「突然、上振れする可能性もあるから、お前ら覚悟しとけ!」ということでしょうか。
あわせて、こんな"予測"もあるようです。
参考:Bloomberg "These 20 Countries Will Dominate Global Growth in 2024"
世界経済に占めるGDP成長率の内訳('19と'24比較)ということだと思います。上記の画像は、筆者が勝手にエクセルに落とし込んだものなので、精度は保証できません。
まず、リージョナリズム信奉者としては、「国ごとの成長率予測が意味をなすのか」という点に疑問を感じざるをえません。次に、その他、特筆すべき点は下記の通り。
- AOEC(その他の経済圏の集合。勝手に略したので、こんな名称はないと思います。)の'24世界経済におけるプレゼンスが高い
- ロシア、ドイツ、エジプトは、5年後も同程度の影響力を持つ
- ベトナムは、影響力をなくす
中国が、米国が云々というのは、「まあお互いに、仲良く4%ずつぐらい"クニ"のプレゼンス減らしてみましょう。痛み分けみたいなもんでしょう。その代わり、それぞれの植民地でガッポリ稼いでいきましょうよ」的な既定路線であると考えています。日本は、米国の植民地であって、時代の転換期において特別な"配慮"をいただいて繁栄したクニなので、これから突然再興するとか、ナンバーワンになるとか、そういった楽観的観測は明確にナシだと思います。
個人的には、インドネシアがもう少し健闘するのではないかと考えていましたが、もう少し先、7ヶ年なり10ヶ年での国家建設プランを描いているがゆえに、そこまで焦りはないのであろうし、世界経済の中でのプレゼンスにそもそも興味がないのかもしれません。真っ当な国家運営をしていれば、"マージナブル"な経済を確立できるのは、間違いなく同国であると信じています。帝国の庭としての東南アジアにありながら、インドネシアの発展は内的なドライブ(内需、人口ボーナス、鉱物資源等)が強く、その他のタイやマレーシアのような原油、資本家、観光に依存する国々なんかと比較すると、脆弱性は低いと思います。今回、ベトナムが外れると予想されているのも、結局は中国依存であり、今後の盤石な支持が期待できないとされているからかもしれません。よくわかりませんが。
とにもかくにも、これまで"大きなクニの渦"に巻き込まれるかのごとく、それぞれの小国が大国の思惑に翻弄され、存亡の危機、または繁栄を迎えてきました。それが、経済史上の基本ルールであったと思います。しかしながら、今後はそのような論理が通用しない。相容れないとしながらも、結局は根っこが同じ。「あいつとなんか、絶対付き合わねえからな!」と周囲に嘯きつつも、仲睦まじく一緒に下校する思春期真っ盛りの高校生カップルの可愛いウソのような、純粋かつ高潔なイデオロギーが、地球の奥底には存在するのかもしれません。
ここまで話が飛躍すると、まとめるにも一苦労ですが、やはり個人的には「クニで語る時代は終わった」と申し上げたい。各時代の為政者の妄想の中で生み出された"国境"が、経済の境目でもなければ、経済が収束するポイントでもない。殊に、我々の業界における「リサイクル・イン・チャイナ期」のあとに何が起こったのかを振り返れば明確な事象です。周辺の国々に、中国で蠢いていた利権が移転した。確かに、環境規制だのプラスチックだのと問題は起きますが、それは本来であれば、淘汰されるべきアクが表出した、これまで中国が目を瞑ってきた必要悪であったわけです。それを、あたかも「うわー、やべー」と右往左往することは、非常にナンセンスであって、この流れは何年も前から、中国自身が「この利権、手放すから!内部では、もういい。どっか、他のところでやってくれ」と突き放していた既定路線だったはずです。
巷でよく言われる、「中国ほどの巨大胃袋を持ったクニはない」という定説。確かに、その通りだと思います。しかしながら、過去、中国が消化してきた資源は、現在、どのように処理されているのでしょうか。中国が輸入しなくなったから、我々の生活圏に資源ゴミが山積みになって放置されているのでしょうか。いいえ、そんなことはないと思います。仮に、我が国に残されているとしたら、それは放射性のものか、かつてのものづくり大国が生み出した、リサイクル再生に向かない高品質製品のような類のものだと思います。実際のところは、「中国があー」などと言いながらも、その他の地域に流通していることは間違いない。そうですよね。
一時の騒動が落ち着いたマレーシアなんかでも、いわゆる既得権益層(港湾周辺、役人、既存のリサイクル業者)が潤えば、なんのことなく受け入れしちゃうわけです。タイでも、結局は業界の人に頼み込めば、流通はできている。クニの管理できることなんて、そんなものでしょう。おそらく、中国共産党は、人間の弱さなり、組織の対応力の限界、国体を維持するためのコストなんかに対して、物凄い意識が向いていて、ある程度の見切りを"クニ"につけているのだと妄想しています。それが、江沢民政権から連綿とつづいていた人間臭い商売、商人が利益を独占できる胡散臭い"貿易"から足を洗うことであって、明確な利回り設定から導き出される手堅い"トレーディング"の運用にシフトすることでもあると考えるのです。
今般の「中国、スクラップやめるってよ」報道に対して、個人的には「環境どうのこうのではなく、"スクラップ"じゃ、すぐに現金化できないから、"原料"と言い換えるだけなのになあ」などと思ってしまう。「言葉の綾」と一括りにできましょうが、本意はそこまで浅くないように考えております。