アフリカで花開く一帯一路
鉱山で起こる紛争やらなんやらって、最初に誰が「いっちょ、やってやっか!」って周りを嗾(けしか)けるんでしょうか。いつも疑問に感じてしまいます。
今回もチリで暴動まがいの事態になっている、既に暴動なのか、よくわかりませんが、大変みたいですね。都市伝説信奉者としては、「胡散くせえな」と感じてしまいます。かつては、チリペソと銅相場が相関関係にあって、同国での情勢を探ることが肝要であったのだと思います。しかしながら、現代に至っては、そこまでの影響力はないものだと認識しています。そんな状況下にありながら、相場関係者は「わーい、銅が上がった!」とけしかける。完全にポジショントークですよね。業界の面々は、相場の上げ下げで飯食っているようなものですからね。まったく、こういう仕手筋の方々には、ただただ畏敬の念しか湧きません。
中国、スクラップやめるってよ
そんな中、なかなか興味深い記事を読みました。
タイトルは、「グダグダ相場の中でも、中国は銅に関してはかなり強気だよ!(原題:"China takes the long view on copper despite soft market")」といった風情です。カナダのThe Globe and Mailという媒体ですが、数日間のみフリーアクセスで全文読めました。
特筆すべき点は、下記の通り。
- Jiangxi Copper(江西銅業)が、Pangaea Investment Management社を通じて、バンクーバー在 First Quantum Minerals社の株式10.8%を得たことを先週報告した
- 最終的には、その持分が16.6%にまで上昇する可能性もある
- Kamoa-Kakula銅山プロジェクト(コンゴ共和国)は、バンクーバー在 Ivanhoe Mines社が開発を進めている
- 同社の株主は、中国の CITIC Metal Group社(26.4%)、Zijin Mining Group社(13.9%)
- 後者は、Kamoa-Kakulaの39.6%の権益を持っている
はああ〜そこまで強気なら、無理して銅スクラップを買わなくても平気ですよね!ここまで肩入れするということは、何らかの確信がないといけないですよね。5Gインフラにしても、昨今の米中協議の狭間でグズグズしておりますが、結局は必要とされているわけで、いつかはドーンとくるわけでしょう。自動車産業に関しては、まだしばらくPHV車の一般への導入が主体となって、"こなれた"頃合い、庶民の購買意欲がある程度みえた段階で充電ステーションの建設ラッシュ、ドンとEV車といった感じでしょうか。時を経るごとに、産業のコア部に使われる銅の使用量は増えるとされています。今は、「待ちのタイミング」であって、米中でヤンヤヤンヤやりあっているのは、"時間稼ぎ"とでも申しましょうか、"焦らし"なのでしょうか。よくわかりませんが。
カモア-カクラとは
そこで、Kamoa-Kakula銅山プロジェクトについて、少し調べて参りました。といっても、プロジェクトの進捗、状況については、ウェブサイトで公開されております。
場所は、コンゴ共和国のコルウェジという地域の西側だと思います。
カモア地区とカクラ地区、それぞれをひとつのプロジェクトとして取り纏めているようです。
鉱床のサイズは、マンハッタン島より少し大きい程度。実際の採掘は、6メートル高、21トンローダー、60トンダンプ車で運搬。
銅精鉱デリバリーのロジスティック網は、周辺国の港を使って、世界中に。
今後の展望
- ステージ1(2年): 銅品位グレード 7.1% | ステージ2(以後10年): 銅品位グレード 6.4%, 年間生産量Ave. 29万1千トン
- 4年目 生産量見込み: 36万トン
- 初期資本コスト: 1.1 billion USD
- 平均キャッシュコスト(10年): 1.11USD/lb
- 銅精鉱の品位: 55%
あと、面白いなあと感じたのは、財務分析に用いた銅相場の標準が、3.1USD/lbだということです。ドルトン換算で、おおよそ6,835USD/MT。仮に、足元の相場が5,840USD/MTであれば、おおよそ1,000USD/MTは上げにならないと、プロジェクト全体の採算が合わない可能性があるということだと思います。枕が長くなりましたが、現在、中国がこのプロジェクトに意気込んで前のめりになるということは、至極当然、今後の相場はそれ以上に上昇するということではないでしょうか。想定採算ラインを日本国内の電気銅建値に換算(ドル円@105仮定)すると、760JPY/kg。現在の水準から、100ポイントほど上を指すわけです。もちろん、想定なので修正も入るかと思いますが、プロジェクト自体は順調に進行している様子なので、供給面での不安というのは少ないかと思います。大国の一帯一路構想の集大成が、数年ののち、花開くことは間違いないと考えております。